保育士として働いています。
粉ミルクの缶を見ると、必ず書かれているこの表示。
完全ミルク育児の方の中には、
「見るたびにちょっとつらい」
「ミルク育児を否定されている気がする」
と感じる方もいるかもしれません。
ですが、この表示は「粉ミルクがダメ」という意味ではありません。
実は、法律や広告規制の流れの中で決められた“許可表示”です。
この記事では、
- なぜ粉ミルク缶に「母乳が最良」と書かれているのか
- 許可表示とは何か
- ミルク育児を否定する意味なのか
- 液体ミルクではどうなっているのか
を、保育士の視点からわかりやすく解説します。
粉ミルク缶の「母乳が最良です」表示とは
粉ミルクの缶には、メーカーを問わず次のような文章が書かれています。
かなり目立つ位置に太字で書かれているため、気になってしまう方も多いですよね。

特に完全ミルク育児の場合、
「母乳じゃないとダメなのかな」
「責められている気がする」
と感じてしまうこともあると思います。
ですが、この表示は個人を責めるためのものではありません。
この表示の正式名称は「乳児用調製粉乳たる表示」
実はこの表示には正式名称があります。
それが、「乳児用調製粉乳たる表示」です。
つまり、粉ミルクを「母乳の代替食品」として販売する際に必要な表示、ということです。
厚生労働省の通知でも、粉ミルクは「母乳の代替」であるという考え方が示されています。
なぜこの表示が必要なの?
背景には、世界的な「母乳育児推進」の流れがあります。
昔は粉ミルクの広告がかなり自由で、
- 母乳より優れているように見せる
- 誰でもミルクで十分という印象を与える
という問題もありました。
そのため、WHO(世界保健機関)などが、 「母乳育児を不当に弱める広告は避けるべき」 という考え方を示すようになります。
その流れを受け、日本でも粉ミルクには一定の表示が必要になりました。
「母乳が最良」=ミルク育児否定ではない
ここは誤解されやすい部分ですが、
「母乳が最良」という表示は、ミルク育児を否定する意味ではありません。
実際には、
- 母乳が出にくい
- 体調の問題
- 仕事復帰
- 服薬
- 育児負担
- 家族で分担したい
など、さまざまな理由でミルク育児を選ぶ家庭があります。
そして今の粉ミルクは、栄養面でもかなり研究・改良されています。
大切なのは、 赤ちゃんが安全に十分な栄養を取れていること です。
保育園でも、完全ミルクで元気に育っている子はたくさんいます。
一方で、
「ミルクを飲まない」
「量が安定しない」
と悩む方も少なくありません。
「粉ミルクを飲まない子に対し保育園でしている工夫」についてはこちらで詳しくまとめています。
「乳児用調製粉乳たる表示」の歴史
この許可表示については、厚生労働省でも制度として整理されています。 平成21年の通知では、次のように書かれています。
許可を受けるべき乳児用調製粉乳たる表示の範囲については、母乳代替食品としての用に適する旨が医学的、栄養学的表現で記載されたものに適用されるものとする。
平成21年の食安発第0212001号より抜粋

つまり、
「粉ミルクは母乳の代替食品である」
という前提で制度設計されていることがわかります。
液体ミルクにも同じ表示はある?
最近では、液体ミルクも普及してきました。
災害時や外出時にも便利で、使う家庭は増えています。
液体ミルクについても、平成30年に制度改正が行われました。
その際の資料には、次のような記載があります。
「男女共同参画・女性活躍の推進に向けた重点的取組事項について」及び「女性活躍加速のための重点方針2017」において、母乳の代替としての新たな選択肢となり得る乳児用液体ミルクの普及実現に向けた取組を推進する必要があるとされている。 平成30年5月15日発行資料より
つまり液体ミルクも、 「母乳の代替食品」 として制度化されたということです。
最近では、夜間授乳や調乳負担を減らすために、液体ミルクの他、自動調乳機を取り入れる家庭も増えています。
自動ミルクメーカーのメリット・デメリットはこちらで詳しく紹介しています。
保育園で保育士が実際に見ているのは「母乳かミルクか」より飲み方
保育園で乳児保育をしていると、
「母乳の子」
「完全ミルクの子」
「混合の子」
本当にさまざまです。
ですが、現場で保育士が重視しているのは、
“どのミルクか”よりも、赤ちゃんが安全にしっかり飲めているか
です。
例えば、
- きちんと飲めているか
- 飲む量は極端に少なくないか
- ペースが早過ぎていないか
- 姿勢は安定しているか
- 飲んだ後の様子はどうか
などを細かく見ています。
特に乳児期は、飲むときの姿勢や飲み方によって、むせ込みや飲み疲れも起きやすいため、「安全に飲めること」はとても大切です。
保育園では「ミルクだけで満腹」にし続けるわけではない
また、保育園では離乳食が始まる時期になると、
「食事から栄養を取れるようになること」
を重視しています。
そのため、ミルクはあくまで離乳食の補助として考えています。
実際、赤ちゃんの多くはミルクが大好きです。
ミルクは、
- 飲みやすい
- すぐ口に入る
- 甘みがある
ため、離乳食よりミルクを好む子も多いです。
ですが、好きだからといって毎回ミルクでお腹を満たしてしまうと、離乳食が進みにくくなることもあります。
そのため保育園では、
- 食事時間を少し長めに取る
- 食べやすい形状に調整する
- ミルクを見える位置に置かない
- 無理のない範囲で離乳食を進める
など、一人ひとりに合わせて工夫しています。
もちろん「無理やり食べさせる」ということではありません。
その子の成長や発達を見ながら、
“少しずつ食事から栄養を取れるようになること”
を目指しているイメージです。
毎日のミルク作りや育児負担を少しでも減らしたい方は、
も参考にしてみてください。
まとめ|「母乳が最良」表示を気にしすぎなくて大丈夫
粉ミルク缶の「母乳が最良です」という表示は、
- 法律や制度上の理由
- 母乳育児推進の世界的流れ
- 広告規制
などから決められた許可表示です。
そのため、「ミルク育児はダメ」という意味ではありません。
実際の育児では、
- 赤ちゃんがしっかり飲めている
- 保護者が無理をしすぎない
- 家庭に合った方法を選べる
ことの方がずっと大切です。
母乳でもミルクでも、赤ちゃんが安心して育っているなら十分。
必要以上に罪悪感を持たなくて大丈夫ですよ。
