共働きの現役保育士です。
保育園における不適切保育や虐待のニュースに不安になるお父さん・お母さんも少なくないのではないでしょうか。
保育士である筆者個人の目線から、このような不適切保育は本当に行われているのか、実態を報告したいと思います。
結論から言えば、皆さんが利用している”普通”の保育園でも不適切保育が行われている可能性があります。
不適切保育とは
不適切保育の定義は、 文字どおり不適切な保育のことです。
子どもを身体的または心理的に脅かしたり、傷つけたりする保育のことを言います。
不適切保育のニュース
ニュースをチェックすると毎日のように、保育園における不適切保育や虐待のニュースが流れてきます。2023年度は例えば次のような事例が報じられました。
名古屋市内の認可保育園Aの事例
あわせて4人の保育士が、園児が食べたものを吐くまで、嫌いな給食を食べさせたり、給食を2時間以上にわたって食べさせ続けたりするなどの行為があったということです。
名古屋市内の認可保育園Bの事例
園児が吐き出して机の上や床に落ちた食べ物を再び園児に食べさせたほか、食べ物が床に落ちたことに対し「ごめんなさいは」と謝罪を要求するなどの行為があったということです。
横浜市内の認可保育所の事例
保育士が0歳の子どもに哺乳瓶を抱えるように持たせて介助もせずに1人でミルクを飲ませたほか、子どもを暗いトイレに閉じ込めたり、「ぐず」「ばか」「泣き虫」といった暴言を吐いたりするなど、あわせて5件の不適切な保育があったということです。
寝屋川市の認可外保育園の事例
園長が、子どもに対して「やかましい」とか「ごはんあげへんよ」などと繰り返し大きな声を上げていたということです。
普通の保育園でも不適切保育はある
上記で紹介した各不適切保育として処分を受けた事例に対し、筆者が勤務している保育園でこのような対応が行われたことがあるのか、正直に伝えたいと思います。
また、保育士としての見解も付しますが、保育士の立場からの見解である点にご留意ください。
筆者の勤務園
- 好立地にあることもあり入園希望者が多い
- 0歳から5歳まで在籍する70名規模の保育園
食べたものを吐くまで食べさせる(名古屋市内の認可保育園Aの事例)
園児が食べたものを吐くまで、嫌いな給食を食べさせたという事例。
「嫌いなものでもまずは1口」という方針の元、スプーンで口に食べ物を入れる保育士、筆者の勤務園でも少なくないですね。
飲み込んだものを吐くまでではなく、飲み込まずにペッと口から出すほど嫌っているメニューを、何度か食べるよう頑張らせるということは筆者も行うことがあります。
背景として、子供のためというよりは給食の先生が「◯◯組は給食の残量が多い」と園長に報告をすることも多いため、極力残量を減らすように担任たちが努力しなくてはならないという事情があります。
そして園長は、園児の身体的な成長の伸び幅を市役所に報告する義務を負っている。このため、「嫌いなものはどんどん残してね」とは言えないという背景があります。
給食を2時間以上にわたって食べさせ続ける(名古屋市内の認可保育園Aの事例)
給食を2時間以上にわたって食べさせ続けたという事例。
きのこが嫌いな2歳児に対し、1時間程度座らせて食べるよう促した先生、実際いましたね。
筆者個人的には、長時間食べさせ続けるというのはありえないと思います。その間、他の友だちが行っている活動に参加できないのはもちろん、給食の時間自体が嫌になってしまいますよね。
吐き出して机の上や床に落ちた食べ物を再び園児に食べさせる(名古屋市内の認可保育園Bの事例)
園児が吐き出して机の上や床に落ちた食べ物を再び園児に食べさせたという事例。
筆者の勤務園で、上記の1時間程度座らせて食べるよう促した先生が吐き出した食べ物を再び園児の口に入れるという行為をしていましたね。
その先生は他園に異動したけど、今も保育士として勤務中。
食べ物が床に落ちたことに対し謝罪を要求(名古屋市内の認可保育園Bの事例)
食べ物が床に落ちたことに対し「ごめんなさいは」と謝罪を要求したという事例。
筆者の勤務園では、落としたことに対し謝罪を要求する先生見たことありませんが、落ちた食べ物を「自分で拾おう」ということは、特に大きい子のクラスでは当たり前の習慣として行っています。
園児同士のトラブルでお互いに謝ろうと促すことは頻繁にありますが、先生に対し謝罪を要求するあたり、この保育園の闇が見えますね。
哺乳瓶を抱えさせ1人でミルクを飲ませる(横浜市内の認可保育所の事例)
0歳の子どもに哺乳瓶を抱えさせ1人でミルクを飲ませた事例。
哺乳瓶を持てる子供に1人で飲んでもらうことは、日常的に行っていますね。
ラックに座らせたり、膝に頭をのせて角度を保ちつつといった具合です。
保育士1人で3人の園児にミルクを飲ませるとして、一人ずつ抱っこして飲ませていたら他の2人はずっと待たせて泣かせるわけにはいきません。
この不適切保育の処分では、1人でミルクを飲ませた事自体ではなく、次項のような暴言なども行われていたこともあり、総合的な判断で処分されたものと推察します。
「ぐず」「ばか」「泣き虫」といった暴言を吐いたりする(横浜市内の認可保育所の事例)
子どもに「ぐず」「ばか」「泣き虫」といった暴言を吐く事例。
子供に向かってこのような暴言を吐く先生はいませんが、先生同士の会話で「◯◯君は泣き虫だから~」ということは良く聞きます。
子供が先生同士の会話を良く聞いているので、先生同士の会話の内容にも細心の注意を払わないといけないことは保育に関わる者全員が徹底すべきことと思います。
「やかましい」とか「ごはんあげへんよ」などと怒鳴る(寝屋川市の認可外保育園の事例)
子どもに対して「やかましい」とか「ごはんあげへんよ」などと繰り返し大きな声を上げたという事例。
「やかましい」はないとしても、大きな声を上げる場面、筆者自身にもあります。
例えば、まさに今お友達に噛みつこうとしている子を発見したときに、「ストッープ!!」と大声を上げてびっくりさせて、口を離させるという場合などです。
この不適切保育の事例では、繰り返し行われていた点が処分対象になったと推察します。また、園長が行っていたとのことで、内部告発ではと勘ぐってしまいます。
不適切保育チェックリスト
不適切保育にはどのような行為があるのでしょうか。参考になるのが全国保育士会が保育士向けに公開しているセルフチェックリストです。
保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト(全国保育士会)
このリストの中では次のようなかかわりが不適切であると定義されています。
「良くない」と考えられるかかわり
(1)子ども一人ひとりの人格を尊重しないかかわり
(2)物事を強要するようなかかわり・脅迫的な言葉がけ
(3)罰を与える・乱暴なかかわり
(4)一人ひとりの子どもの育ちや家庭環境を考慮しないかかわり
(5)差別的なかかわり
保育園を評価するときはもちろん、家庭保育においても自身が不適切な行為をしていないか振り返る材料になるので、是非リストをチェックしてみてください。
まとめ
保育士として昨今の不適切保育の処分事例を見て思うことは、「保育士全員をひとくくりにして見ないで」ということです。
不適切保育が横行している保育園というのは、行政や運営会社からの圧力や家庭の問題なども複雑に絡み合って、保育園自身や保育士個人では解決できない闇を抱えているように見えます。
筆者個人としては、今後も一人の保育士として、子どもたちが楽しく保育園に通えるよう工夫しながら保育を続けるだけと考えています。
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